仏事の雑学① 〜 袈裟(けさ)

法事などでお坊さんが身に纏っている色とりどりの袈裟に目が止まったことはないでしょうか。そういえば不思議な形をしていて、そもそもどんな意味があるものなのか?そんな仏事にまつわる疑問の中から一つテーマを取り上げて紹介するシリーズ、初回は「袈裟」についてです。

仏教発祥の頃のインド。お釈迦さまが仏弟子とそうでない人の区別が一目で分かるように服制を定めるときに、そばにいた阿難尊者をかえりみながら水田を眺めて、「あのようにするのがよいであろう」と言われたそうです。それは水田に種をまけば実りがあるように、法の種をまけば福徳の実りがあるとの教え。その後に仏弟子たちが着用したものが福田衣(ふくでんえ)あるいは田相衣(でんそうえ)ともいわれる袈裟のルーツとなるものです。またこの頃、貧しい家々では説法を聞いた施しとして僧侶に渡すものが何もないため赤ちゃんのおしめに使う布を差し出したといい、僧侶はその布を尊い布施として受け取ったといわれます。このようにして集まった布を寄せ集め、継ぎはぎだらけの着衣を作って着ていたものが文字通り糞掃衣(ふんぞうえ)といわれるものですね。

仏教の法衣にはそれを司る、刀賤(とうせん)・体賤(たいせん)・色賤(しきせん)といわれる三種類の理念があります。刀賤は水田の畦(あぜ)のごとく長方形に切り刻まれている様子【福田衣】、体賤はボロ布の意【糞掃衣】、そして色賤とは濁色に染めることを意味し、銅の錆びた色、河の泥色、赤土の色の三つの色を指します。この仏法にかなう色とされる濁色、壊色、不正色のことをサンスクリット語でカサーヤといい、ここから袈裟という言葉が生まれることになります。

やがて仏教が日本に伝来してもなお、僧侶の法衣とされる袈裟を形作る方法と理念はそのままに伝承され、宗派により形を変えながらも現在に至る袈裟になったといえそうです。

私たち浄土真宗の僧侶は、法要などで着用する五枚の長方形の布を繋ぎ合わせた「五条袈裟」、お葬式の導師が着用する同じく七枚の布からなる「七条袈裟」、そして日常的な法務で用いる「輪袈裟」があります。ぜひ機会があれば袈裟の色、形などにも注目してみてください。

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