郡上の八幡 出て行くときは
雨も降らぬに 袖しぼる
私たちの地元、岐阜県が誇るユネスコ無形文化遺産であり、この地方の盛夏の風物詩でもある「郡上おどり」の曲目のひとつ『かわさき』の歌い出しであります。以前このブログでも紹介しました「雨も降らぬに 袖しぼる」の一節が暗示する涙の別れとは?その諸説ある中のひとつ、郡上一揆を題材にした一冊が、
『松の露:宝暦郡上一揆異聞』
(諏訪宗篤 著、2025年刊行、早川書房)
ー 浪人 奥津慶四郎が訪れた郡上領。そこで目にしたのは貧困にあえぐ村民たちと、容赦なく搾取を続ける領主の暴政。村民たちは領主 金森頼錦こそが圧政の元凶であると見極め、江戸への直訴を決意する。村の代表である惣次郎は仲間とともに慶四郎に同行を願い出る。しかし金森は浪人たちを雇い村方衆が郡上を出るのを阻止しようと街道に罠を仕掛ける。慶四郎が村人たちを守るものの、過酷な道のりの中で倒れていく者が続出。追い詰められた中、願いを届けるために惣次郎は命を懸けた最後の手段に打って出る。慶四郎もまた、後戻りできない道を進むことに ——。(単行本、紹介文より抜粋)
この本は単なる郡上一揆の顛末を描いただけの時代小説ではありませんね。農民たちの命懸けの幕府への直訴(訴訟)、さらには目安箱への訴状を代筆する公事師(弁護士)の活躍など、まさに江戸時代の「訴訟ドラマ」としての側面こそが読みどころといえそうです。
そして、この本を読み終えて思うことは、当時の郡上の人々を苦しめた原因が「災害、増税、物価高」と、なにやら現代の日本に通じるものばかり。彼らのように勇気を持って立ち上がることができるのか?今を生きる私たちにも深く考えさせられる一冊であります。
この地方が舞台となる歴史時代小説はそうはありません。ぜひご一読ください。




