『生きられる時間は限られている。だから、他人の人生を生きることで君の人生を空費してはならない。』
アメリカの実業家、アップルコンピュータ創業者のスティーブ・ジョブズが2005年にスタンフォード大学の卒業式で行った伝説的なスピーチの中の言葉です。
かつて〈世のため、人のため〉を美徳とした日本人の感覚からすると少し違和感を覚えるものかもしれません。他人との関わりを持つべきではないとも取られかねない言葉です。もちろん真意は違いますね。古くは「少年よ大志を抱け」の名言もありました。志を持て、夢を持て、信念を持て、とは言い尽くされた言葉です。スティーブ・ジョブズは違います。彼は今まさに社会人として歩み出そうとしている若者に先の言葉を贈りました。それは自らに責任を持ち、自らの意思で判断し、自らを信じて行動するべきである、なぜなら他人の思惑が入る余地のない、他人を慮る必要もない、自分自身の人生だから。彼がこの言葉に込めた思いです。
他人の人生を生きることなく、自らの人生を生きたスティーブ・ジョブズ。しかし彼からの数々の贈り物(iPhone…etc.)によって世界中の〈他人〉の生活が豊かになったからこそ、先の言葉は若者たちの心に深く刻まれたに違いありません。
2011年10月5日、この世を去ったジョブズにオバマ大統領が異例のメッセージを発表してこの天才に哀悼の意を表しました。
「この星で最も成功した会社のひとつをガレージから築き上げることで、彼はアメリカの創意工夫の精神を実証しました。(中略)スティーブは自らの言葉どおり、毎日が最後の日であるかのように生き、私たちの生活を変え、全産業を再定義し、私たち一人一人が世界を見る方法を変えたのです。」