2024年のプロ野球もシーズン後半戦を迎えました。とくにセ・リーグは日々順位がかわる混戦模様。地元 中日ドラゴンズの健闘にも期待したいところです。そんな中日ドラゴンズのチーム内において現在、打撃成績の三冠王(打率、打点、本塁打)となっているのが細川成也選手ですね。そして彼は2022年のオフシーズンにはじめて導入された現役ドラフト制度によって横浜DeNAベイスターズから移籍した選手でもあります。
この現役ドラフトとは出場機会が少ない中堅選手の移籍活性化を目的として導入された制度であり、プロ野球12球団が自身のチームからドラフト指名対象とする選手を2名以上リストアップし、その対象選手の中でドラフト指名が行われ新たな移籍先を決める制度ですね。
細川選手ほどの強打者を手放すなんて、横浜DeNAベイスターズの球団首脳陣もよほど見る目がなかったのかといえば、必ずしもそうとは言えないようです。チームを移籍することによって環境が変わり、新たな監督、コーチ、チームメイトと出会い、さらにチーム事情によって出場機会が増え、なによりこの機会を逃すまいと懸命に努力したことが細川選手の好成績につながっている。つまり細川選手自身が現役ドラフトという新たなチャンスを見事につかんだ結果ともいえそうです。
以前、雑誌の記事で、プロ野球や社会人野球の有望選手を幾人も輩出しているという少年野球のクラブチームの指導者の方が、「私の指導方法が優れているわけではありません。とにかく子供たちにあらゆるチャンスを与えるようにしているだけなんです」と答えておられました。
指導者は文字通り「指導すること」に重きを置くものですが、それよりも大切なことは教え子に多くのチャンスを与えてやることかもしれません。環境を変える。人を紹介する。仕事を任せる。好きな道を歩ませる。バッターボックスに立たせてやる。細川選手の大躍進から思うことでもあります。
「チャンス」という言葉は仏教のお教えに習うならば「ご縁」という言葉に置き換えられるかもしれません。チャンスとは人生にめぐるご縁の一つの形。このご縁に心からの感謝をしてこそ、チャンスを与えることも、チャンスをつかむこともできるのかもしれません。