二足の草鞋を履く

ー 同一人が両立できないような二つの職種を兼ねるという意味。例えば、銀行員として働きながら作家でもある場合、両立が難しい二つの職種を担っていることから「二足の草鞋(わらじ)を履いている」と表現する。一人が二足の草鞋を同時に履くことはできないことからこのように言う。

このことわざの語源は江戸時代といわれ、賭博を専業とする博徒(ばくと)が罪人を取り締まる捕吏(ほり)の役務を兼ねていたことが由来であり、元来は同時に行なってはいけない役務を一人の人間が行っていたり、どっちつかずの中途半端な立場であることを表すなど批判的な意味合いを持つことわざのようです。

しかしながら副業の概念が多様化し広まりつつある現代社会においては「二足の草鞋を履く」ことの捉え方も変化しているようですね。とくにコロナ禍があってから将来に不安を抱え、今後の不安定な経済状況に備えるために副業を考える人はどの業種でも増えているとのこと。そのため近年では大手企業ですら人材が流出することを防ぐため副業を認めるケースが増えており、もはや「二足の草鞋を履く」ことは当たり前の時代ともいえそうです。

そうした時代背景が後押ししているのかもしれません。ある雑誌に「定年退職後に出家するシニアが増えている」という記事がありました。かつて企業の猛烈社員としていかにお金を稼ぐかという生活を送ってきた人たちが、定年退職後に己を見つめ直す仏門の道、いわゆる〈老後出家〉を選ぶことがあるようです。ひと昔前ならそれを望むことも、受け入れることも容易には叶わなかったに違いありません。どうやら「二足の草鞋」を履かなかった人たちだからこそ、第二の人生においてためらうことなく真新しい「二足目の草鞋」を履くべき時代の到来といえるかもしれませんね。

さらに、批判を受けながらも「二足の草鞋」を履き続けることができれば、それは「二刀流」として称賛される時代の到来ともいえそうです。

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