ロックンロール

『短期間にこのような流行をみたものは、かつてのスペイン風邪、その後のロックンロール位のものである』
〈作家・星新一〉

音楽のジャンルのひとつである〈ロックンロール〉は、まことに不可思議なものです。発祥がアメリカであること以外、その起源も、定義も、形態もすべて曖昧。しかしながら世界中の若者に爆発的に流行し、熱狂的に指示され、やがては音楽のみならず「ロックの精神」「ロック魂」とも表現される理念が構築されることになります。

『ロックンロールは窓にぶつける石だったはずなのに、それ自体が建造物になってしまった』
〈ボブ・ディラン〉

『概念的に言って、ロックンロールより優れたものはない』
〈ジョン・レノン〉

『音楽は聴く人の心に耕される創造と思考の世界なんだ』
〈ロバート・プラント/レッド・ツェッペリン〉

『ロックは構造的な自由がない分、表現の自由がある。ロックという音楽の核はエネルギーの表現にあるんだ』
〈エルビス・コステロ〉

今回は、観念世界である〈仏教の信仰〉と〈ロックンロール〉にはどのような共通点があるのか?ロックアーティストが残した数々の名言と共にロックの歴史を振り返りながら考察してみることにします。

1950年代半ばにアメリカで興ったポピュラー音楽であるロックンロールは、4拍子の偶数拍に強いアクセントを置いたビートを特徴としており、チャック・ベリー、リトル・リチャードなどのリズム・アンド・ブルースと、エルヴィス・プレスリー、ビル・ヘイリーらのロカビリーなどの音楽を指し、一説ではロックンロールという言葉は1955年にアメリカのラジオDJ、アラン・フリードが「ロック・アンド・ロール」という言葉を放送で使ったのが最初とされているようです。

そしてイギリスでは、これらのロックンロールやブルース、R&Bに影響を受けたミュージシャンが登場し始め、1960年代、ロックの主要な舞台はイギリスに移り、ビートルズ、ローリング・ストーンズ、ザ・フー、キンクスなどに受け継がれていきました。

『エルヴィス以前には何もなかった』
〈ジョン・レノン〉

『ロックンロールは、別に俺たちを苦悩から解放してもくれないし逃避させてもくれない。ただ、悩んだまま踊らせるんだ』
〈ピート・タウンゼント/ザ・フー〉

ビートルズの登場後、ロックンロールは抽象的な要素を含むようになり「ロック」と呼ばれるようになります。1950年代から1960年代初頭のラブ・ソング主体のポップスやロックンロールとは異なり、ロックの歌詞は反体制、政治・社会問題、芸術、恋愛、哲学など幅広いテーマを扱うようになります。

『愛国心を持つなら地球に持て。魂を国家に管理されるな。政治には嘘がつきものだけど、音楽は違う。音楽は嘘なんてつけないものなんだ』
〈ジミ・ヘンドリックス〉

『ロックの核心は反体制、反権力だ。成功した俺にはもうロックは歌えない』
〈カート・コバーン/ニルヴァーナ〉

『音楽なんてものは、ある人にはクズ、ある人にはゴールド。それでいいんだ』
〈エドワード・ヴァン・ヘイレン〉

1970年代に入りディープ・パープル、レッド・ツェッペリンらのハード・ロックが商業的成功を収め、その影響を受けたクイーン、キッス、エアロ・スミスがデビュー。1970年代前半には、派手なメイクのT・レックス、デヴィッド・ボウイらのグラム・ロックも人気を博すなど、ロックのスタイルは多様化し、表現も発言もより自由なものになっていきました。

『ただ闇雲に突っ走ればいいってもんじゃない。要は魂さ』
〈アンガス・ヤング/AC /DC〉

『錆びるより燃え尽きたい』
〈ニール・ヤング〉

『俺は暗黒のプリンス、オジー・オズボーンだぞ!俺は邪悪なんだ、シャボン玉などいらん』
〈オジー・オズボーン〉

『(来日して美味しかった食べ物は?)牛丼。あれは最高にロックだね』
〈ノエル・ギャラガー〉

日本のロックの夜明けについては多くの議論がなされるようです。アメリカのビル・ヘイリー&ヒズ・コメッツの「ロック・アラウンド・ザ・クロック」が日本語でカバーされたのが最初のロックンロール・レコードとされる説とともに、エルヴィス・プレスリーのカバーなどのロカビリー・ブーム、1960年代に入るとベンチャーズに影響を受けたエレキ・ブーム、そして1966年6月29日、ビートルズの来日によって彼らを代表とするリバプールサウンドに触発されたグループサウンズのブームが到来します。1972年にロカビリーの流れからオリジナルの音楽性を生み出し活躍したキャロルのデビューを日本のロックのパイオニアとする意見もあるようです。やがて日本文化である歌謡曲の影響もあり、日本のロックは感性豊かに独自のロック・シーンを形成していくこととなります。

『どうしても日本語にできない英語があります。それはロックンロール』
〈甲本ヒロト〉

『ロックがもう死んだんなら、そりゃロックの勝手だろ』
〈真島真利〉

『何百万枚も売れるロックなんて、あんましロックじゃない』
〈忌野清志郎〉

『年齢的な危機感も感じるし、後は大御所だけかよみたいな。大御所になるくらいだったらちょっと、ロックンロールっていう名前を人生から外したいな』
〈布袋寅泰〉

『1000の言葉より3分間のロックンロール』
〈佐野元春〉

こうして世界中の若者に絶大な影響を与えた〈ロックンロール〉。もしかすると歴史上、〈ロックンロール〉という音楽以上に若者の心を解放した例はないかもしれません。

『決して満たされることのなかった青春の途中で、僕にとっては音楽が、ロックが、すべての苦悩を遠ざけてくれるものだった』
〈フレディ・マーキュリー〉

『リトル・リチャードを聴いたとき、僕は僕の世界に火を放った』
〈デビッド・ボウイ〉

『僕はロックンロールの囚人だ』
〈ブルース・スプリングスティーン〉

『僕がシンガーになったのは歌が上手かったからじゃない、他のことすべてがどうしようもなく下手だったからだ』
〈ボノ/U2〉

苦悩を抱える若者の魂を揺さぶる〈ロックンロール〉というものは、あるいは「苦」と向き合い、受け入れることによって「生きる」ことの価値観を改めさせていただく仏教の教えに通じるものかもしれませんね。そしてその教えを拠り所とする者が「南無阿弥陀佛」と称えるように、この方はこの言葉を唱えるのかもしれません。

『ロケンロール』
〈内田裕也〉

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