永久欠番

3月26日、プロ野球が開幕しました。
そこで今回は、プロ野球の栄光の歴史の象徴〈永久欠番〉について調べてみました。

プロ野球における〈永久欠番〉とは「球団に多大な功績を残した人物の栄誉と栄光を末永く称えるため、その人物が使用した背番号を球団内でその人物のみが使用できるように欠番とする番号」のことですね。
調べてみると意外に〈その人物=永久欠番〉が少ないことに気づかされます。すべて挙げると以下の通り(選手での顕彰のみ)

【巨人】(1)王貞治 (3)長嶋茂雄 (4)黒沢俊夫 (14)沢村栄治 (16)川上哲治 (34)金田正一
【阪神】(10)藤村登美男 (11)村山実 (23)吉田義男
【中日】(10)服部受弘 (15)西沢道夫
【広島】(3)衣笠祥雄 (8)山本浩二
【西武】(24)稲尾和久

この中の3名は国民栄誉賞受賞者という錚々たる顔ぶれであり、ある意味〈名球会入り〉や〈野球殿堂入り〉よりも名誉なことともいえそうです。選手生涯を一球団に捧げ、球団の黄金期を支えた。あるいは前人未到の大記録を残した。などが顕彰される理由のようです。

ところが、この慣習も途絶えたかに思えた2016年、それまでの顕彰者とは異なる理由で〈永久欠番〉になった選手がいます。
広島東洋カープ〈15番〉黒田博樹投手です。
彼の顕彰理由を挙げるとするならば「最もファンに愛され、最もファンを愛した選手」ということになりそうです。彼の有名なエピソードをいくつか紹介しますと、

〈2006年〉球界を代表するエースとなった彼はこの年、海外FA権を取得し、メジャー球団から複数オファーを受けます。メジャー挑戦が彼の夢であることを知っているファンは〈メジャー移籍〉を覚悟します。ところが彼は懇願するファンの声に応えて〈残留〉を決断します。このことにファンは号泣します。

〈2007年〉今度はファンが恩返しをします。「次は、あなたの夢を叶えてください」と彼のメジャー挑戦を後押しします。彼は「必ず広島に戻ってきます」と約束し、LAドジャースに移籍します。そのドジャースでの入団会見。彼は「日本から来ました…」とは言いません。全米メディアに向けて堂々と胸を張り「広島東洋カープから来ました、黒田博樹です」と自己紹介します。これにまたファンは泣かされます。

〈2015年〉彼はメジャー球団からの高額オファーを断り、その1/5ほどの年俸で古巣・広島に復帰します。彼にしてみれば理由はただ一つ「約束を守るため」。ついにファンは涙が止まらなかったことでしょう。

彼の寡黙で精悍な佇まい、潔い立ち振る舞いは平成に現れた「侍」を思わせるものでした。
かつての「侍」は主君への〈忠義〉に命を捧げましたが、黒田博樹はファンと球団への〈恩義〉に選手生命を捧げた「ラストサムライ」といえそうです。

【恩徳讃】
如来大悲の恩徳は、身を粉にしても報ずべし
師主知識の恩徳も、骨を砕きても謝すべし

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