シネマ感想文14〜二つの太陽

このブログを書いている5月4日は「スター・ウォーズの日」ということであります。1977年に公開された『スター・ウォーズ』を劇場で観賞したファンの一人として、満を持してこの作品を取り上げてみることにします。

「A long time ago in a galaxy far,far away…」
(遠い昔 はるかかなたの銀河系で…)

映画『スター・ウォーズ』のオープニングに青色の文字で浮き上がる一節ですね。このあと観客はこの言葉が示すように宇宙を舞台にした壮大な物語と目を見張るSF映像に度肝を抜かれることになります。

ところがです。さらに驚かされたことはこの映画の製作費が1,100万ドルという極端な低予算であったことです。そういえば主要な出演者は当時まったく無名の俳優(オビ=ワン役のベテラン俳優アレック・ギネスを除く)が起用されていたり、冒頭の舞台となる惑星タトゥイーンはセットが不要なロケーションとして砂漠が選ばれていたりします。それなのに観客はなぜ『スター・ウォーズ』に壮大なスケールと果てしないロマンを感じたのか?理由は2つです。

一つは例のオープニングの青い文字の一節。それは未来ではなく遠い昔の物語であるということ。観客は存在しない未来よりも存在していたかもしれない未知の過去に悠久のロマンを感じるもの、とても秀逸ですね。

そしてもう一つは惑星タトゥイーンでのシーン。主人公ルーク・スカイウォーカーが遠く眺める夕焼けの空には〈二つの太陽〉が浮かんでいます。例の砂漠に過ぎない場所を〈二つの太陽〉によってはるかかなたの銀河系の惑星の風景として観客は瞼に焼き付けられます。

ジョージ・ルーカスによる〈スター・ウォーズ・サーガ〉といわれるスペースオペラ・シリーズは1977年公開のエピソード4から始まり、42年の歳月をかけてエピソード5、6、1、2、3、7、8と公開され、やがて迎えた2019年公開のエピソード9。その完結作。

『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』
(2019年、アメリカ映画)

世界中の『スター・ウォーズ』ファンが見届けるシリーズ完結作のラストシーン。復活した皇帝パルパティーンとその艦隊を壊滅したレジスタンス一行は惑星エイジャン・クロスに集結し勝利を祝います。観客は(これで終わりなのか)と思いきや、場面は変わり見覚えのある風景が。それは主人公レイとBB-8が最後に訪れる砂漠の惑星タトゥイーンと夕焼けの空に浮かぶ〈二つの太陽〉でした。

シリーズの締めくくりとして『スター・ウォーズ』の原点である〈二つの太陽〉に回帰したラストシーンに誰もが納得したに違いありません。

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