言葉が足りない

学校の部活動の顧問の先生が、「明日は朝9時、10分前には集合するように」と口頭で伝えたところ、翌朝ある生徒が遅刻をして、9時を過ぎた9時10分前に現れたという笑い話がありますね。遅刻した生徒はまったく悪くありません。悪いのは言葉が足りなかった顧問の先生ということになります。令和の現在ではきちんと正しく「9時の10分前」あるいは「8時50分」と言わないと子供たちや若者には正しく伝わらないという中高年世代への教訓でもあります。

そして友人から聞いたもう一つの教訓。

彼が勤める会社で10人ほどの社員が夜遅くまで残業をしていたときのこと、社長が若い男性社員を呼んで「みんなの夜食に近くのマクドナルドでハンバーガーを買ってきてくれ」と一万円札を渡して買い出しを頼んだそうです。

この状況、男性社員は何を買ってくるのが正解でしょうか?

どうやら社長が望む正解は、手軽に腹ごしらえができるハンバーガーの単品を一人あたり2〜3個分買ってくること、そしておつりで社内にある自動販売機のドリンクを買うことです。ところが男性社員は同僚の助けを借りて二人で持ちきれないほどの10人分のバリューセット(ハンバーガー、フライドポテト、ドリンクのお値打ちセット)を買ってきたそうです。男性社員にしてみればお値打ちに安く買い物をすることが正解だと考えたのでしょう。

もちろんこの男性社員を責めることはできません、非があるとすれば社長さんです。「一を聞いて十を知る」という古い格言がありますが、それを期待して言葉足らずのあいまいな指示を与えることは、誤解をまねく元であり現代社会では通用しません。このことから教訓は、

「正しく伝えないと、正しくは伝わらない」

仏教のお教えは、お釈迦さまのお説法をそのままに聴いた弟子たちによって脈々と受け継がれ現在に至ります。はるか2600年前にお釈迦さまが口頭で語られたお教えが今日に伝わるという奇跡。正しく伝えることの大切さが身にしみるというものですね。

さてその後、友人の会社の事務所のテーブルの上には、大量の飲み残しの紙カップと、食べきれないフライドポテトが山盛りになっていたそうです。その光景を見た社長さんはさぞかししょんぼりしたことでしょう。お察しします。

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