お手本にすること

文藝春秋に脚本家・倉本聰さんの対談記事があり、この中で北海道・富良野の山麓で暮らす御歳88の倉本さんが毎週欠かさず観ているテレビ番組として「プレバト!!」(TBS系列)を挙げておられました。万物に達観した風情の倉本聰さんがお気に入りとあれば、やはりこの番組は秀逸な娯楽番組なんだと改めて感心しました。

「プレバト!!」は俳句、水彩画、生け花などの制作を芸能人の方々が本気で取り組み、才能査定をランキング形式で発表していくバラエティ番組ですね。古くから「NHK俳句」など習い事講座といわれる教育番組は数多くありましたが、このジャンルをエンターテイメントとして確立した「プレバト!!」はお見事というしかありません。

そしてこの番組の魅力のひとつが、それぞれ専門分野の先生方が披露する「お手本」の数々といえそうです。エントリーした作品の意図とテーマを踏まえつつ手直しされる「お手本」の出来栄えには毎回感嘆させられます。言葉だけではなく「やって見せる」ことの凄み。これに勝る説得力はありませんね。

しかしながら本当の意味での「お手本」とは、芸能人の方々が数日かけて制作した複数の作品を、どんな仕上がりであってもすべて完璧に手直ししてみせるという、先生方の制作に懸ける集中力と一切妥協しないという信念。つまり技術ではなく心構えこそが真の「お手本」というべきかもしれません。

俳句にしてもアートの世界にしても達人名人が一つ事をやり続ける、成し続けることで会得した技術と心構えは、決して芸能人の皆さんが一朝一夕で得られるものではありません。学ぶ者はそのことに思いを巡らすことでようやく、さらなる高みの境地を知ることができるといえそうです。

「一つ事をやり続ける大切さ」

住職の心得というものは学校や書籍などでも多くのことを学びましたが、最も大切なことは先代、先々代が本堂の阿弥陀さまの御前でおつとめをする姿、やり続ける姿から学んでいたともいえます。
まことの「お手本」とは、学ぶ者の心の眼に映っているものかもしれませんね。

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