シネマ感想文26 〜 11.5 秒

「11.5 秒」

映画ファンの方ならピンと来るかもしれません。この秒数はある映画の有名なワンシーンの長さです。世界中の観客がこのわずか「11.5秒」に度肝を抜かれ、また世界中の少年たちが影響を受けてこのシーンの真似をした。そうです、映画『燃えよドラゴン』(1973年、香港・アメリカ)の中でブルース・リーがヌンチャクを振り回したシーンですね。

そして、この映画を初めて観た少年たちはもう一つの衝撃を受けます。この最強のヒーロー、ブルース・リーはそのときすでにこの世を去っていました。少年たちは落胆しましたが、彼はそれまでに3本の主演作品を残しており、『燃えよドラゴン』のあと立て続けに日本公開されることになります。

『ドラゴン危機一髪』
(1971年、日本公開1974年)

『ドラゴン怒りの鉄拳』
(1972年、日本公開1974年)

『ドラゴンへの道』
(1972年、日本公開1975年)

この3本の作品、驚くことにすべてが傑作。『危機一髪』では多勢の敵を相手に大暴れしました。『怒りの鉄拳』は主人公の仇討ちに観客は感情移入します。『への道』のローマ・コロッセオでの決闘シーンは映画史に残る名場面です。それならば、彼の主演作から最高の一本を観るとしたらどの作品か?悩んだ末に選ぶのは、

『死亡遊戯』(1978年、香港)

この映画は『燃えよドラゴン』の撮影に入る直前、彼がクライマックス・シーンだけを撮影していた未完成フィルムを使い、彼の死後に代役を立てながら長編として完成させた作品ですね。この作品を選んだ決め手は冒頭に触れたヌンチャクです。

香港のスーパースターになり、やがてハリウッド進出を目前としている頃に臨んだこの『死亡遊戯』の中の彼のアクションは自信に満ちあふれ、心技体のすべてが充実しきったかのように映ります。そして何より、少年たちがが興奮したあの『燃えよドラゴン』の「11.5秒」を凌駕する圧倒的な技とスピードの見事なヌンチャクを披露してくれました。脂の乗り切ったブルース・リーが思う存分に能力を発揮した渾身のアクション。『死亡遊戯』を選んだ理由であります。

とは申しましたが、やはり他の作品も捨てがたい。もっともっと熟考すべきようにも思える。そんなときは彼にこう叱られるかもしれません。

『 考えるな、感じろ 』

- ブルース・リー 『燃えよドラゴン』より

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