名言と親鸞聖人① 〜 大河ドラマ『べらぼう』より

著名人の言葉や映画の台詞など、さまざまな名言を考察しながら親鸞聖人のお教えに照らしてみる「名言と掛けて親鸞聖人と解く」新シリーズです。第一回の名言は、

『 越中守様、人は「正しく生きたい」とは思わぬのでございます。「楽しく生きたい」のでございます 』

聞き覚えのある方も多いことでしょう。この名言は大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺』の一場面。寛政の改革の一環として厳しい質素倹約令を押し進める老中・松平定信に対して、幕臣・本多忠籌が申し上げた諫言の台詞ですね。

敵対する松平定信と田沼意次の対比を「正しい」と「楽しい」に象徴した表現であり、ドラマでは当時流行した狂歌「白河の清きに魚も住みかねて元の濁りの田沼恋しき」も紹介しつつ、かつての田沼時代は良かったという民衆の声を表すものでもあります。ところが皮肉なことに、その田沼意次を失脚させたのも米騒動をはじめとする民衆の声。人々を導くご政道というものがいかに困難なものかがわかります。

親鸞聖人ならばどうお考えになるでしょうか。
歎異抄 第一条に、

「本願を信ぜんには、他の善も要にあらず、念仏にまさるべき善なきゆえに」

「(抄訳)阿弥陀仏の本願を信じる人は、念仏以外に、ほかの善行をする必要はありません。念仏よりも優れた善はないからです」

という一文があります。親鸞聖人は、罪悪深重の凡夫に過ぎない私たちは「正しく生きる」という外面的な善行よりも、人間の内面、阿弥陀仏の本願を信じる〈信心〉という心のあり方こそが大切だと教えてくれています。

ご政道も同じかもしれません。人々を導くために必要なものは、信用できる、信頼を置けるの〈信〉の一字といえそうです。これは寛政の世も、令和の現代も、変わることはありませんね。

お問い合わせ
PAGE TOP