私のような時代小説ばかりを愛読している見栄っ張りな読者は本を選ぶときに「〇〇賞、受賞作」といった文言にとかく心惹かれるものであります。ところが、見栄っ張りでありながら稚拙でもある読者にとって「芥川賞」などの純文学はどうもわからない。エンターテイメント小説の傑作を選ぶ「直木賞」作品を読みたいところですが、時代小説というジャンルに括るとなかなか作品数も限られる。そんなときに是非参考にしたいのは、本屋の店員さんがオススメする本。今回取り上げる時代小説の一冊は、大阪の書店員さんが「ほんまに読んでほしい」本を選ぶ「Osaka Book One Project」2013年、第一回受賞作、
『銀二貫』
(高田郁 著、2009年 刊行、幻冬社)
大坂天満の寒天問屋「井川屋」店主の和助は、天満宮再建のために寄進するはずだった銀二貫で仇討ちを買い、ひとりの少年の命を救う。少年は松吉と名を改め、士分を捨てて井川屋の丁稚として生きることになる。厳しい商人の世界で奮闘しながら、人との絆を深め、商いの本質を学んでいく感動の物語。
江戸時代における「銀二貫」の貨幣価値は、現在に換算すると200万円〜400万円ほどになるそうです。偶然の出会いから「銀二貫」によって命を救われた少年が、巡り巡って再び三たび「銀二貫」に人生を左右される。そして物語の最後に語られる「銀二貫」の本当の価値とは。小説のタイトルでもある「銀二貫」というお金が物語を通じて重要なカギになるところがまさに読みどころでもあります。一人の少年の成長を描いた22年の物語のラストに深い感動をいただくこと間違いありません。
ちなみにこの作品は、ネット上のおすすめ時代小説ランキングでも上位にランクされているようで、2014年にはNHKでドラマ化もされました。今さらに取り上げていることもお恥ずかしいですが、拙い読者ながらも「良いものは良い」といえる素晴らしい一冊ですね。




