栗きんとん

仕事柄というべきでしょうか、それに何より自身の嗜好も相まって和菓子をいただく機会がとても多いようです。そして数多ある美味しい和菓子の中でもこの季節にいただく「栗きんとん」ほど格別なものはありません。

調べてみると栗きんとんは、漢字で「栗金団」と書けば、おせち料理の一品である栗の甘露煮をサツマイモ餡で絡めた栗菓子のことを指し、一方「栗金飩」と書けば、地元・岐阜県中津川の銘菓「栗きんとん」のことを言うそうです。もちろん今回このブログで取り上げるのは後者の栗きんとんであります。

思い返せばこの栗きんとんが子供の頃から好きだったわけではありません。それどころか四十を過ぎた人生後半になってようやく、この栗きんとんの魅力に気付かされたんですね。

そのきっかけはたまたま観ていたテレビの情報番組。この番組の中で紹介されていた栗きんとんの製造工程がとても印象に残ったんです。職人さんが掌の茶巾にのせた栗きんとんを軽く握りながらキュキュッと茶巾を絞る。するとあの可愛らしい大粒の栗きんとんが掌から顔を出す。わかっていたはずなのに、なぜかこの手作業に感銘を受けたんですね。

きっとそれからです。栗きんとんのあの大粒を見ると、誰とも知らない職人さんの掌がなんとなく思い浮かぶようになり、そのまごころに感謝しながらいただく栗きんとんがより美味しくなったに違いありません。

栗きんとんの名店、恵那川上屋さんのホームページに掲載されている「栗きんとん」の紹介文です。

『目指すはおばあちゃんの味。いちばん美味しい栗きんとん、それはおばあちゃんが手鍋で炊いたあの味。裏山で両手いっぱいの栗を拾い、子供たちの笑顔を思い浮かべながら、時間をかけてこしらえたあの温かい味。採れたての素材で丁寧に炊いた「おばあちゃんの栗きんとん」こそが私たちが目指す究極の栗きんとんです』

東濃の地で栽培される「超特選栗」を素材とする栗きんとんは全国に誇る高級菓子に違いありませんが、その本当の価値は、郷土の素朴な味、優しい味、おばあちゃんのまごころの味なのかもしれませんね。

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