最も偉大な歴代アメリカ合衆国大統領は?と問われた時に、さまざまなランキングで常に上位にランク付けされるのが、アメリカ独立戦争の指導者であり、初代大統領を務めたジョージ・ワシントン、そして世界恐慌からの脱却を目指した「ニューディール政策」を主導し、第二次世界大戦では連合国を率いた第32代フランクリン・ルーズベルト。そして彼らを抑えてランキング1位に選ばれるのが、奴隷解放宣言を行い、南北戦争を勝利に導きアメリカを統一したことで知られる第16代エイブラハム・リンカーンだそうです。
『リンカーン』
(2012年、アメリカ映画)
監督 スティーブン・スピルバーグ、出演 ダニエル・デイ=ルイス、サリー・フィールド、トミー・リー・ジョーンズ、ジョセフ・ゴードン=レヴィット。
先にも挙げたリンカーン大統領の最大の政治的業績である「奴隷解放宣言」が発せられたのが1862年9月。そして、
「人民の人民による人民のための政治を地上から決して絶滅させないために、われわれがここで固く決意するものである」
このあまりにも有名な「ゲティスバーグ演説」が行われたのが1863年11月9日。この映画はこれらの出来事が過去のことである1865年1月、リンカーンが大統領に再選されて2ヶ月後から始まり、1865年4月14日、彼が観劇中に銃撃され生涯を閉じるまでの3ヶ月間が描かれます。
このわずか3ヶ月の間にリンカーン大統領が挑んだ最大にして最後の賭けこそが〈ある一つの法案〉を下院議会で可決させること。この一点を描いた物語と言っても過言ではありません。
この映画の劇中、リンカーン大統領がたった一度だけ声を荒げて激昂する場面があります。それは〈ある一つの法案〉を可決するための票集め工作が難航する中で、策を弄するリンカーンを非難するロビイストに向かって言い放った一言、
「私は強大な権力を持つアメリカ合衆国大統領なのだ!」
ユーモアを絶やさず、すべての人々にオープンに接し、穏やかで、誰もに愛される大統領がこれほどまでに激怒して、きわどい政治工作を駆使してまでも可決しなければならなかった〈ある一つの法案〉、それが、
『アメリカ合衆国憲法修正第13条』
第1節
奴隷制もしくは自発的でない隷属は、アメリカ合衆国内およびその法が及ぶ如何なる場所でも存在してはならない。
第2節
議会はこの修正条項を適切な法律によって実行させる権限を有する。