ユネスコ無形文化遺産『郡上おどり』

7月の土曜日の夕暮れどき、外出先の近くの公園から盆踊りのお囃子が聴こえてきました。この夏はじめて耳にする『かわさき』です。

この地方の盛夏の風物詩といえば「郡上おどり」で間違いありません。岐阜県郡上市八幡町で400年以上続く盆踊りであり、日本三大盆踊りの一つでもあります。誰でも輪に入って踊れる参加型で、7月中旬から30数夜にわたって催される「日本一長い盆踊り」として知られており、特に8月13日から16日の「徹夜踊り」は有名ですね。2020年にはユネスコ無形文化遺産に登録された世界に誇る日本の無形文化財でもあります。

この郡上おどり『かわさき』の有名な歌い出し「郡上の八幡 出てゆく時は 雨も降らぬに 袖しぼる」この意味には諸説あるそうですね。どの説でも「雨も降らぬに 袖しぼる」が「涙の別れ」を意味しているという点は共通していますが、問題は、誰が誰との別れで涙するのかという点。士農工商の融和を図るためにこの盆踊りを奨励した江戸時代中期の城主、青山氏との別れという説。1754年の郡上一揆において、当時の藩主、金森氏の圧政に苦しんだ農民が、極刑覚悟で老中に駕籠訴をするため江戸へ向かう際の別れを唄った説。あるいは男女の別れ、家族との別れに涙した説など。これらの歌詞に込められた400年前の人々の心情に思いを馳せて、踊りの輪に加わるのも一興かもしれません。

郡上八幡観光協会のホームページを拝見すると、郡上おどりの魅力についてこのような紹介文がありました。

ー お囃子と下駄の音、それに川のせせらぎが重なって山あいにこだまする夏の夜の風情。圧巻は徹夜で踊る盂蘭盆会の夜明け近く、東の空が白々と明けゆく頃。その時は歌い手と踊り手の息がピッタリと合って夏の夜の短さを惜しむように踊りが続きます。

数十年前にたった一度だけ、この情景を目にしたことがあります。参加した者だけが味わえる、これもまた郡上おどりの醍醐味ともいえそうですね。

最後に豆知識をひとつ。
郡上おどりの曲目『春駒』という踊りはまことに不思議なことに、アップテンポであればどんな曲でも踊ることができます。キャンプファイアーの余興などで最新のヒット曲にのせて「春駒」をみんなで踊る。子供たちも喜んで参加してくれること間違いありません。

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