1985年にバンド結成、1987年にシングル『リンダ リンダ』でメジャーデビュー、瞬く間に若者の心を掴み、一躍日本の音楽界のトップシーンに登り詰めたロックバンド〈THE BLUE HEARTS〉。この人たちの楽曲に触れない訳にはいかないようです。
〈THE BLUE HEARTS〉の“作詞の世界”を一言で表現するならば、そのバンド名そのものと言えるかもしれません。簡単な英単語でありながら〈憂鬱なハートたち〉とメッセージを込めて響きもいい、シンプルだけどありそうでなかったカッコいいバンド名。彼等の作詞の特長、言葉えらびのセンスはこれに象徴されているともいえそうです。
楽曲は主にボーカルの甲本ヒロトさん、ギターの真島昌利さんが作詞作曲しており、驚くのはヒット曲の数々もほぼ二人で分け合うように作詞作曲していることですね。例えば『リンダ リンダ』『情熱の薔薇』は甲本ヒロトさんの作詞作曲、『TRAIN-TRAIN』『青空』は真島昌利さんの作詞作曲です。その文学性も高く評価されている二人の“作詞の世界”を聴き比べてみるのもよいかもしれませんね。
そして数ある名曲の中でも今回取り上げたいのはこの一曲、
『1000のバイオリン』
(1993年、作詞・作曲:真島昌利)
ヒマラヤほどの消しゴムひとつ
楽しいことをたくさんしたい
ミサイルほどのペンを片手に
おもしろい事をたくさんしたい
この冒頭から登場するサビのフレーズは、彼等の楽曲の中でも最も感銘を受けた一節であります。日頃使っている消しゴムやペンを「ヒマラヤほどの消しゴム」「ミサイルほどのペン」と飛躍させてしまいます。バカバカしいほどの発想の自由を表現しながら、心のありよう一つで「人生おもしろい」といえるんじゃないの?そう笑い飛ばされているような気分にもなります。
このサビのフレーズは歌詞を変えることなく楽曲を通して3回登場します。それほどまでにマーシーが伝えたかった若者たちへの応援歌だったに違いありません。