河童

この地方のラジオを聴いておりますと、なにやら巷では「河童(かっぱ)」がにわかに流行っているそうです。今さらながら河童が話題にあがることに興味を覚え、少し調べることにしました。

河童といえば言わずと知れた日本の妖怪であり、鬼、天狗と並んで日本の妖怪の中で最も有名なものの一つですね。水辺に棲んでいる、頭のてっぺんに皿がある、キュウリが好物、いたずら好きで相撲が大好きなど、その外見や特徴も広く知られている想像上の生物であります。

そして意外に誤解されているのが、16世紀に大成した中国の白話小説『西遊記』に登場する河童の沙悟浄(さごじょう)のイメージから中国伝来の妖怪かと思いきや、じつは沙悟浄は物語上で創作された水の妖怪で日本の河童とは一切無関係、沙悟浄=河童というのは日本の児童向け作品固有の意訳であり、つまり河童は歴とした日本固有の妖怪なんだそうです。

仏教世界がモチーフの『西遊記』と河童とは無関係でしたが、何かしら河童と仏教との繋がりはないものかと調べておりますと、ある地方の言い伝えでは「河童は仏教関連の事物を避ける」とのこと。どうやら河童と仏教とのご縁はありそうもなく、しいて挙げれば文豪・芥川龍之介さんの命日、7月24日を彼の代表作である短編小説『河童』にちなんで「河童忌(かっぱき)」と呼ぶことくらいでした。

芥川龍之介さんといえば彼の短編小説の一つに『尼提(にだい)』という作品があります。尼提は『仏説阿弥陀教』に「一時仏在舎衛国(いちじぶつざいしゃえいこく)」と説かれる、その舎衛国城内で除糞人と呼ばれる最も貧しい階層の人物。ある時、尼提は通りの前方からお釈迦さまが歩んで来られるのを目にします。彼は自らの卑しい身分を恥じて、お釈迦さまの目に触れることを避けようと横道に入ります、ところがその横道でもまたお釈迦が歩んでこられるのを目にします。幾度もお釈迦さまを避けようと横道に入ってもその度にお釈迦さまが歩んで来られる。やがて尼提の前に立たれたお釈迦さまが微笑みを浮かべて彼に出家を勧められ「仏の法に貧富貴賤男女の差別はない」と説かれます。

お釈迦さまを避ける尼提
仏教を避ける河童

芥川龍之介さんを通してようやく河童と仏教が繋がりました。

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