空の弁当箱

「父さん、明日学校でお弁当いるよ」

小学一年生の長男に言われてハッとしたんです。先週、我が家では三人目の子が誕生し、妻と生まれたばかりの次女は病院にいるため、しばらくこの家には私と長男長女の三人だけ。もちろん長男の弁当を作ってやるのは私の役目です。

「そうか、わかった、何が食べたい?」

「焼きそば、大盛り」

よーしっ、きたきた、それは任せとけ!とばかりに翌朝、定番のマルちゃん焼きそばをたっぷり焼いて弁当箱に詰め込み、隙間には湯煎で温めたイシイのミートボールを入れてみると、弁当箱は真っ茶色、これこそ男メシといったお弁当が出来上がりました。

やがて下校時刻。学校から帰宅した長男から弁当箱を渡され、フタを開けてみると、お弁当はすべて完食、弁当箱はピカピカの空になっていたんです。きっと彼は喜んでお弁当を食べてくれたんだろうなと思うと、何とも言えないうれしさが込み上げて、胸にグッと来るものがありました。

そのとき、ふと自らの高校時代を思い出したんです。母親が毎日作ってくれるお弁当を残さず平らげて、ピカピカの空の弁当箱を母親に渡していたこと。あの頃の母親もそれを見て喜んでくれていたのかなと思うと、うれしい気持ちとともに、感謝の思いでいっぱいになったんです…

これは、ある日のラジオで聴いたエピソードです。ありふれた日常の出来事でありながら、とても心に響く素敵なお話ですね。母親に空の弁当箱を渡すときに「美味しかった、ありがとう」と感謝を伝えることができたなら、きっとそれが一番いいでしょう。でも長い年月が過ぎたからこそ気付かせてもらう感謝もあります。あのとき感謝を伝えられなかったことよりも、いま感謝をあらためることができたこと。本当に素晴らしいですね。

そして小学一年生の男の子。もしかしたら初めてお弁当を作るお父さんを気遣って、簡単な「焼きそば」をリクエストしたのかもしれません。ピカピカの空の弁当箱には、たくさんの思いやりと感謝が詰まっていたという素敵なエピソードでもあります。

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